アンチエイジングと健康

アンチエイジング医学(抗加齢医学)という言葉を聞いて皆さんはどのように思うのでしょうか。シワやシミをとるための手術とかサプリメント・化粧品などを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
 そもそもアンチエイジングの考え方は1990年頃に成長ホルモンの投与が外見的・筋力的に若返りをもたらした事をきっかけに始まり、1992年には米国抗加齢学会が設立され健康長寿を目指す学問として急速に世界中に認知されてきました。
 日本では2001年に第一回抗加齢医学研究会が開催され、2002年には研究会から医学会に昇格し、可能な限り商業主義を排除し学問性の追求がなされています。ちなみに私はこの学会の会員になり、専門医資格を取得しています。抗加齢医学は加齢や老化のメカニズムを明らかにし、それに対抗する為にどうしたらいいのかを研究する学問です。
 基礎分野として、遺伝子、細胞医学、活性酵素、免疫、代謝、ホルモンなどと抗加齢との関係、臨床分野では診断法や検査法、食事・身体活動・サプリメントなどの生活習慣と抗加齢の関係、さらにホルモン補充療法・肥満対策・美容と化粧など、非常に広範囲に亘り、医師以外の多業種の方が学会に参加しています。
 さて、人はだれでも生まれた瞬間から加齢を重ねていき、物理学的な時間の長さという加齢は全員同じです。一方、物理学的加齢が作る衰えが身体や精神的に現れるものを生物学的加齢といいますが、こちらのほうは個人差があることは経験的に明らかなことです。もし生物学的な加齢もみんな同じように起こるのであれば、抗加齢という考えそのものが成り立たなくなってしまうのですが、現実は年をとるということは、個人差が広がっていくということに他なりません。若くして倒れる人もいれば、高齢でも元気な人(心身機能の低下が少ない人)もいます。RoweとKahnが1987年に提唱した“サクセスフル・エイジング”(表1)を目指すのが抗加齢医学の使命であり、抗加齢医学は究極の予防医学と言えます。

 表1
サクセスフル・エイジング
1.疾病や障害の原因となる危険因子が少ない状態
2.認知および身体運動機能を良好に保持している状態
3.人生に対して積極的に関与している状態
                             (竹下敏光)

2022年04月01日